たったひとつの気がかり その9
寒さが戻った。
空は澄んで雲は動かない。
今日もバーちゃんは、息絶え絶えながらも静かに眠っている。そして時々大きなアクビをするからふしぎだ。少なくとも苦しいとかワケわかんなくなってもがくとかそうじゃない。
病院のベッドで寝ているだけというのも変なものだ。座って今か今かと見てるだけの家族も変だと隣りの人は思っているだろうとちょっと思う。
毎日寝顔を見ながらいろんなことを思い出している。こんなにも穏やかな別れ方をするなんて夢のようだ。
春のそら 遠きひとに ならんかな