一人暮らしのサイトヨ様

　あっという間の一週間だった。
連休明け、びっくりしたことにサイトヨ様が倒れて入院手術となったのだ。　
息子の船乗り氏は連休中帰省していたが　千葉に帰ったばかりのところで慌ててまた戻ってきたらしい。　ちょうど一ヶ月の休暇中だったから本当によかった。
サイトヨ様は日ごろから　息子はひとり息子だが船乗りだから、ほとんどアテにできないし　心配もかけたくないと言っていた。
「ちょうど親孝行ができますね」と私はわざと船乗り氏に言ってやったが　実際けっこう気を利かせて動くので感心した。洗濯物も持ち帰っていた。
　サイトヨ様はペースメーカーを入れて　2日目にはもう元気に歩いていた。そして畑の心配なんかしだしていた。
「死んだオトーさんの遺言があってね、自分が死んだらお母さんの面倒だけは頼むって書いてあったから　息子もそのことを思い出したんだと思う」とサイトヨ様は　まんざらでもない顔で笑っていた。

　まもなくサイトヨ様は退院するだろう。そうなればサイトヨ様は　もう大丈夫だから早く帰れと言うに決まっている。　船乗り氏も迷わず出かけて行ってしまうだろう｡　見果てぬ夢を追いかけるのもいいけどさ　なんだか残酷なかんじもする。